食事は健康を維持するために欠かせないものであり、生涯続く日々の営みです。
しかし、高齢になるにつれ、食欲の低下、低栄養、誤嚥による事故や病気など、食事にさまざまな問題が生じることがあります。
そこで必要になるのが「介護食」です。
介護食はおいしさだけでなく、栄養バランスや食べやすさや見た目も重視して作られる高齢者に適した食事です。
今回はこの介護食の専門家である「介護食アドバイザー」について解説します。
介護食アドバイザー
介護食作りのスペシャリストを証明する資格
介護食アドバイザーとは、一般財団法人 日本能力開発推進協会(JADP)と東京カルチャーセンターが認定する民間資格です。
介護食アドバイザーは、高齢者の心理や生理機能の老化、栄養素摂取のポイント、高齢者の体の特徴と食事の関係などのほか、誤飲防止のポイントなどの専門的知識を総合的に学び、さらに高齢者一人ひとりに合わせた調理法を身につけたスペシャリストです。
高齢者にとって安心・安全な食生活を提供するだけでなく、食べやすく、おいしい盛りつけ、飾りつけも合わせて実践することができます。
ただ食べるのではなく、食べることの喜びや楽しさを伝えることができる大切な役割を担うのです。
また、介護食を手際よく調理する方法を指導できるため、調理者の負担を軽減することもできます。
介護食アドバイザー資格が活かせる場面やメリットは?
仕事や家庭など幅広く活かせる!
介護食を必要とする現場というとそう多くないように感じられるかもしれませんが、実は介護食アドバイザーの活躍の場はいろいろあります。
●介護・福祉の現場で仕事として活かす
介護や医療施設の調理担当職員の求人は数多くあります。
また、訪問看護を仕事にする方には、介護食に関する専門知識と調理スキルは必須といえます。
食事介助の正しい方法も学べるため、利用者の安全だけでなく、現場で働く方の自信や安心にもつながります。
●食品・飲食業界で仕事として活かす
高齢化が進む今、食品・飲食業界でも介護食の需要は高まっています。
専門知識を活かして、新商品の開発に携わることができます。
●料理教室を開いて悩み解決に活かす
通常の食事とは異なる介護食。
作る手間がかかる、作っても食べてもらえない、飲み込みづらいなどさまざまな問題があります。
そのような悩みを抱える方たちのために、介護食専門の料理教室を開くことができます。
●家庭で家族の安心安全な食生活に活かす
介護食アドバイザーの資格は仕事だけでなく、高齢者のいる家庭でも活かせます。
家族に安心安全なおいしい食事を提供することで、食の楽しさ・喜びを感じてもらうことができます。
このように、資格を活かせる業界は数多くあるので、就職や転職にも役立つでしょう。
介護食アドバイザーの将来性
高齢化が進む現代の日本では、65歳以上の高齢者が実に人口の26%を超えています。
この超高齢社会はさらに加速し、2060年には高齢化率が約40%になるともいわれています。
そして、誤嚥による事故や病気、食欲の低下など、高齢者の食事にはさまざまな問題があります。
介護食アドバイザーはこれらの問題を解決できるため現在も求められる人材であり、今後より一層の需要の増加が見込まれます。
介護食アドバイザー資格の取得方法は?
取得方法には2種類ある!
介護食アドバイザー資格を取得できる講座は2種類あります。
(1) 一般財団法人 日本能力開発推進協会(JADP)認定教育機関であるキャリアカレッジジャパンが講座開講
(2) 株式会社日本フローラルアート運営の東京カルチャーセンターが講座開講
それぞれの学習内容や資格取得方法を見ていきましょう。
(1) 日本能力開発推進協会(JADP):カリキュラム履修後、修了試験に合格
介護職アドバイザーの資格を取得する方法の1つは、日本能力開発推進協会(JADP)の認定教育機関などがおこなう教育訓練において、その全カリキュラムを修了し、修了試験に合格することです。
認定教育機関であるキャリアカレッジジャパンの通信講座「介護食アドバイザー資格取得講座」で実施される3ヶ月のカリキュラムを例にあげ、その学習内容について簡単にご説明します。
◆1ヶ月目:介護食を必要とする【高齢者の体と心】について学びます。
「老化による体と心の変化」や「高齢者がかかりやすい症状と病気」をはじめ、「認知症について」や「高齢者との接し方」など、まずは高齢者の体と心に関して学習します。
その後、「摂食・嚥下障害」について学びます。
高齢者に多い誤嚥や窒息の知識はもちろん、口腔ケア、口腔機能トレーニングなどの知識もここで学びます。
これらを身につけることで、安心して高齢者に食事をとってもらうことができるようになります。
◆2~3ヶ月目:正しい介護食づくりのための調理スキルを身につけます。
介護食を作るにあたり「嚥下食」「介護食」について学び、食事の基本や食べやすい・飲み込みやすいコツを学びます。
それを終えると「介護食づくりの基本」を学びます。
軟菜食、ソフト食の基本の作り方のほか、介護食の基本テクニックとして、切り方、加熱、作りおきなどを学びます。
最後に学ぶのは「食事介助の基本」です。
食が細くなりがちな高齢者の食欲を促すためにおこなう準備、食事介助の方法、自分で食べられる方のサポート方法、症状別の食事の食べさせ方や食べ方を学びます。
以上が、JADPが認定しているカリキュラムとなります。
(2) 東京カルチャーセンター:カリキュラム履修・すべての課題に合格
もう1つの取得方法は、株式会社日本フローラルアート運営の東京カルチャーセンターが開講している「介護食アドバイザー養成通信講座」でカリキュラム履修後、すべての課題に合格することです。
この講座では、誰にでも食べやすいメニューであるユニバーサルレシピが学べます。
その6ヶ月のカリキュラムと学習内容について簡単にご説明します。
カリキュラムは以下のとおりです。
◆1ヶ月目 テキスト1:栄養と調理の基礎知識
◆2~3ヶ月目 テキスト2:介護食を作るために
◆4ヶ月目 テキスト3:楽しい介護食
◆5~6ヶ月目 テキスト4:日常食としての介護食
オリジナルのテキスト4冊をもとに学習を進めていきます。
基礎知識に始まり、献立作りや調理の注意点、食事介助のノウハウや口腔ケアなど実践に役立つ内容が学べます。
いずれの期間でも質問は随時受け付けています。
毎月のテキスト学習後は、課題を提出して添削指導を受けます。
全カリキュラム履修後に、修了課題を提出し、こちらも添削指導を受けることになります。
全6回にわたるすべての課題に合格すれば「修了証(認定証つき)」を取得することができます。
介護食アドバイザーの試験情報
上記で紹介した(2)の方法の場合、検定試験はありません。
ここでは(1)の日本能力開発推進協会(JADP)が実施する検定試験についてまとめました。
受験資格 | JADP認定の全カリキュラム修了者 |
受験料 | 5,600円(税込) |
試験日程 会場 | 日程:随時 会場:在宅にて受験可能 |
出題範囲 | ・高齢者の心理 ・栄養学の基礎知識 ・介護食の基礎知識 ・高齢期の病気と食生活 |
合格基準 | 得点率70%以上 |
合否結果 | 協会が答案受付後、約1ヶ月で送付されます。 |
介護食アドバイザーと介護食士との違いとは?
資格取得方法に違いがある!
介護食に関する専門資格には、ほかにも「介護食士」という資格があります。
介護食士は介護に携わる人の調理技術の向上を目的とし、公益社団法人 全国調理職業訓練協会が認定する民間資格で、3級から1級までの階級が設定されています。
介護食アドバイザーと同様に介護食に関連する資格ですが、この2つの資格にはさまざまな違いがあります。
なかでも大きな違いはその取得方法です。
ここでは、介護食アドバイザーと介護食士の取得方法とその違いをご説明します。
●学習方法
介護食アドバイザー:通信講座で学べ、自宅で受験可能
介護食士:学校などの施設での通学学習が必須
●受験資格
介護食アドバイザー:誰でも受講、受験が可能です。
介護食士:3級から段階を踏んで取得していきます。
・3級:誰でも受講、受験が可能
・2級:介護食士3級を取得した方
・1級:介護食士2級を取得したのち、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳以上の方
●実務経験
介護食アドバイザー:不問
介護食士:3~2級受験は不問ですが、1級受験時には2年以上の実務経験が必要です。
●難易度
難易度は、介護食アドバイザーよりも介護食士のほうが高くなっています。
学習期間も長く、内容も学科・実技ともに介護職アドバイザーと比較してより深く学びます。
まとめ
介護食アドバイザーについて、活躍の場や学習内容、資格取得方法などを解説してきました。
資格取得後は仕事や家庭など幅広く活かすことができ、高齢化が進む日本において今後益々需要が高まるでしょう。
資格取得が目指せる講座は2種類ありますので、まずは資料を取り寄せて比較し、資格取得を検討されてみてはいかがでしょうか。